初めて会う日、相手の表情が思ったより硬い。返事が短く、目もあまり合わない。そんなとき「脈なしだ」と感じて、気持ちが切れてしまったことはないでしょうか。どうせうまくいかないなら、取り繕っても仕方がない。そう思った瞬間から、振る舞いは雑になっていきます。
今回は、SMの嗜好がお互いにあると分かったうえで会う、いわば嗜好ありきの初デートで起きた事例です。実際の話をもとに、人物や場面は大きく作り変えています。
その日に起きたこと
日取りも店も、一週間以上前から決まっていました。ところが当日、男性は「店が見つけられなかった」と言い、急きょ近くのコーヒーショップで会うことになります。混み合った店内は、隣の席との間がほとんどありませんでした。並んでみると、プロフィールに書いてあった身長は、実際とは違っていました。
会話は弾まず、男性はSMの好みや経験を次々に聞き始めました。女性ははっきり「ここではその話はしたくない」と伝えましたが、男性は「前の相手とは、当日会ってプレイしたの?」と、さらに踏み込んだ質問を重ねました。
女性の声(1)
急にお店が変わったことに戸惑いましたし、身長がプロフィールと違うことにも、会ってすぐ気づきました。それでも、せっかく来たのだからと話そうとしていました。でも、周りに人がたくさんいる中でSMの話を聞かれ続け、ずっと落ち着きませんでした。はっきり断ったのに、もっと踏み込んだことを聞かれたときは、早く帰りたいとしか思えませんでした。
男性にも言い分はあったかもしれません。店に着けず、出だしから焦っていた。会った瞬間に相手の表情がくもったように見え、がっかりされたと感じた。返事もそっけない。「どうせ脈なしなら、もうどうでもいい」と、半ば自棄になっていたのではないでしょうか。
けれど、それは振る舞いの理由になりません。女性は「せっかく来たのだから」と話そうとしていました。相手が冷たく見えた時点では、まだ何も終わっていなかったのです。断られた話題をさらに深めて聞くのは、失敗というより、相手の意思を無視する行為です。女性に落ち度はありません。
嗜好が合う相手でも、人前で根掘り葉掘り聞かない
初対面で性的な話題を持ち出すこと自体の問題は、初デートの下ネタはNG。初対面の女性が「怖い」と感じる理由と線引きで取り上げました。ここで考えたいのは、お互いにSMの嗜好があると分かっている相手の場合です。
嗜好が合うからといって、初対面で何でも聞いてよいわけではありません。隣の会話まで聞こえる店では、相手は周りの目まで気にしなければなりません。嗜好の話は、信頼ができてから、話してよい場所で、相手が話したいと思えたときにするものです。「ここでは」と断られたら、その日はもう持ち出さない。過去の相手とのことを聞くのは、場所を問わず避けてください。
店に着けないのは、準備の問題
前から決まっていた店に着けなかったのは、運ではなく準備の問題です。前日までに地図で道順と入口を確かめ、当日は少し早めに着く。それだけで防げます。直前の店の変更は、相手にとって「今日のことを大切にしていないのかも」という最初の不安になります。
プロフィールとの違いは、会った瞬間に伝わる
身長を少し高めに書いていた点も、出だしの空気を重くしていました。並べばすぐ分かる違いは、相手に「ほかのことも盛っているのでは」という疑いを残します。最初に一つ事実と違うことが見つかると、そのあとの振る舞いまで悪いほうに受け取られやすくなります。プロフィールは実物どおりに書いておくのがいちばんです。
脈なしに見えても、最後まで丁寧に
相手の表情が硬いのは、脈なしだからとは限りません。急な店の変更への戸惑い、初対面の緊張、混んだ店の落ち着かなさ。理由はいくつも考えられます。仮に本当に好印象でなかったとしても、その日を丁寧に終えることはできます。感じよく話し、お礼を言って別れれば「誠実な人だった」という印象は残ります。投げやりになった瞬間に失うのは、その一回の出会いだけではありません。自分がどんな人として記憶されるか、そのものです。
次の一回で、できること
- 脈なしに見えても「緊張や戸惑いかもしれない」と考え、最後まで丁寧に話してお礼を伝えて別れる
- 嗜好が合う相手でも、人の多い店や初対面ではSMの話を深掘りせず、断られた話題と過去の相手のことは聞かない
- 会う前日に店までの道順と入口を確かめ、プロフィールの数字は実物どおりにしておく
